激増書庫

将棋と本についてのメモ

渋谷秀樹『憲法への招待 新版』

渋谷秀樹『憲法への招待 新版』(岩波新書 2014)

憲法への招待 新版 (岩波新書)

憲法への招待 新版 (岩波新書)

 

 

■著者からのメッセージ

 日本は、いまだに、憲法をめぐる言説は過剰であり、かつ過少である、といった状況にあると思います。憲法の本質と人類普遍の原理を知らないまま自分の思い込みによって憲法を論じ、立憲主義という言葉すら知らずに憲法改正案を提示し、また自分の主張に都合のよい憲法解釈を展開する傾向がいまなお根強くある面を見れば過剰、にもかかわらず、憲法の本質をしっかり踏まえた言説がほとんどない面を見れば過少。憲法なんか条文を読んだだけですぐわかる、あるいはしょせんは押し付け憲法だから読まなくてもダメだとわかる、といったたぐいの、憲法を、さらにあえて言えば憲法の専門家である憲法学者をあなどる風潮が、昨今マス・メディアに散見されるのも、残念に思っています。

 私は、その原因のひとつが、憲法の本質を正確に伝えて、憲法を理解する手がかりを基礎から説く入門書が、いまなお少ないことにあると考えて、この本の改訂を行いました。この本をきっかけにして、憲法への理解が深まり、素人談義ではなく、熟慮に裏付けられた討議(deliberation)が真剣になされることを期待したいと思います。

 (「あとがき」より)

 

 

【目次】

はじめに [i-vi]

目次 [vii-ix]

 

第1章 憲法とは何か 001

01 聖徳太子の十七条憲法は「憲法」か 002

西欧起源の憲法/国家はどう作られたか/国家は想像の産物か/聖徳太子の十七条憲法

02 権利の規定に比べて義務の規定が少ないのはなぜか 009

憲法にある義務/法的義務か/授権規範と制限規範/政府に義務を課すこと

03 憲法は私たちが守らなくてはならないものか 015

法の支配と人の支配/高次法思想と自然権思想の合流/日本国憲法と「法の支配」

04 憲法改正手続を定める憲法九六条は改正できるか 020

序列のある憲法規範/憲法を作る権力と憲法で作られた権力/八月革命説/八月革命説の問題点/どう正統化できるか/憲法改正規定の改正

 

第2章 人権とはそもそも何か 031

05 人権は無制限に保障されるのか 032

自然権思想/道徳理論/日本国憲法の規定が示す根拠/人権の性質/人権の限界/「公共の福祉」とは何か/権利の類型化とその制限/「二重の基準論」の考え方

06 「国民」と「外国人」の間に人権保障の差はあるのか 041

人権の固有性と普遍性/「国民」とは何か/日本国憲法における国民/「国民主権」でいう「国民」=国籍保有者+定住者/外国人の参政権/判決の「国民」理解

07 「いじめ」は憲法に反する人権問題なのか 051

「個人の尊重」としての人権/なくならない差別/憲法上の権利は政府と私人の間を規律する/人権規定の私人間効力/ストレートな適用はなぜダメなのか/政府と私人の決定的な違い/政府のなすべきこと/法律整備の必要性

08 憲法の明文にない「知る権利」は保障されないのか 061

社会は変わる/憲法を改正する/人権規定を解釈する/「包括的基本権」条項を使う/新しい人権/一三条固有の権利/プライバシーの権利の登場/プライバシーの権利の本質/プライバシーの権利の根拠条文/情報公開法と「知る権利」/特定秘密保護法

 

第3章 どのような人権が保障されるのか 077

09 女性の再婚禁止期間の規定は「法の下の平等」に反するか 078

平等の問題/形式的平等と実質的平等/平等は比較の問題である/所得税は不平等か/男女の間の異なる取扱い

10 「日の丸」と「君が代」の強制はなぜ問題か 087

国旗・国歌と政府の対応/思想及び良心の自由/教育をめぐる権利・義務/公教育の果たす機能/「日の丸」「君が代」のもつ意味/公立学校の儀式における強制/教師の権利

11 内閣総理大臣靖国神社への参拝はなぜいけないのか 098

軍国主義のバック・ボーン/宗教の自由/政教分離原則の本質/宗教的活動との分離/靖国神社の何が問題か/平和主義との抵触

12 無修正ポルノはなぜ売ってはいけないのか 109

なぜ「表現の自由」を保障するのか/規制はどう正当化できるか/規制根拠を再考する/ヘイト・スピーチ

13 犯罪者にはどのような権利が保障されるのか 119

刑事事件と憲法の規定/令状主義/裁判員制度裁判員制度憲法/死刑について

14 都市計画で土地を自由に使えなくなった所有者は補償されるのか 126

所有権の絶対性/財産権の変化/二九条の矛盾/補償の要否をどう判断するか/土地利用のあり方

15 生活保護の支給額が低すぎるとき裁判で差額を請求できるか 133

貧困者の救済/恩恵から権利へ/国政の指針に過ぎない?/裁判所も法的効力は認める/生存権と裁判所の救済/生存権立憲主義の原点

16 選挙区間の一票の価値の不平等は許されるか 142

選挙に関する諸原則/投票価値の較差/最高裁判所の判断/一人別枠方式の合憲性/どう考えるべきか

 

第4章 政府を動かす原理は何か 151

17 内閣総理大臣の公選制に合理性はあるか 152

権力分立思想の誕生/権力分立の本質/権力分立原理のさまざまな制度化/日本の議院内閣制/「首相公選論」の問題点

18 国民代表が決めた法律を裁判所が違憲・無効とできるのはなぜか 162

憲法の定める民主主義/民主主義と立憲主義/裁判にも民主的正統性がある/違憲審査権の正統性/立憲主義の精神

19 「象徴」としての天皇には何ができるのか 172

天皇は主権者かつ統治権者であった/天皇は主権者でも統治権者でもない/象徴とは何か/女系または女性の天皇は認められるか/象徴としての行為?/どのように考えるべきか?/天皇の政治的中立性

20 日本の上空を通過する他国を攻撃するミサイルを撃ち落とすことは合憲か 182

自衛権とは何か/自衛戦争を放棄したか/警察力と軍事力/戦力でない軍事力/現実は規範と乖離しているか/集団的自衛権と日本/9・11報復戦争とイラク戦争自衛隊の変容/九条改正論について

 

第5章 政府の活動内容は具体的にどのようなものか 199

21 国会は何を法律として定めることができるか 200

ルールを作る権限はどこに?/ルールとは何か/「ルール」でないものも作っている/国会が暴走したらどうするか

22 内閣は「法の執行」以上のことをしているのではないか 207

内閣とは何か/行政とは?/内閣の職務としての執政/三権分立か/権力分立

23 裁判所は事件に法律を機械的に適用しているだけか 213

裁判所は機械か/裁判とは創造的な行為である/裁判官の職権行使の独立/憲法判例が変更された例①――尊属殺重罰規定/憲法判例が変更された例②――非嫡出子法定相続分差別規定/違憲判断の及ぶ範囲

24 都道府県や市町村は独自にどのような仕事ができるのか 224

二元的な統治構造/地方統治の根拠は被治者の同意/中央と地方の衝突/中央と地方の事務配分/改正地方自治法の原則/法律と条令/道州制の問題

 

表1 「憲法の体系」 [235]

表2 「個別の人権の分類」 [236]

あとがき(二〇一四年一月五日 産婆として地域の人に愛され、自分が最後にとりあげた子として私を慈しんでくれた祖母・ふゆが産湯をつかった赤子のごとく入浴したまま八〇歳で逝ってから四〇年目の日に、正義が邪悪なものに打ち克ち、美しい日本の平和と自由が永遠に続くことを祈って 渋谷秀樹)  [237-239]