激増書庫

将棋と本についてのメモ

コンビニの小さな本

小さい本

 コンビニの雑誌コーナーには、表紙を伏せてほしいくらいの「18禁」(本屋から追い出された?)や、今後もずっと読まないであろう雑誌が沢山揃えてあるので、立ち読みせずとも表紙を眺めるだけで楽しい。まあ半年に一回くらいなら。

 私の近所のセブンイレブンの雑誌コーナーに『決定版 田中角栄名語録』(2016.8刊)という豆本が置いてあった。ISBNはなく、セブン限定販売かと思う。カバー折り返しには著者紹介が載っている。次の文面。

■著者プロフィール

小林吉弥(こばやし・きちや)

1941年、東京都に生まれる。早稲田大学第一商学部卒業。政治評論家。的確な政局・選挙情勢分析や、歴代実力政治家を叩き合いにしたリーダーシップ論には定評がある。執筆、公演、テレビ出演などで活動する。著書には、『田中角栄 心をつかむ3分間スピーチ』(ビジネス社)、『田中角栄の経営術教科書』(主婦の友社)、『アホな総理、スゴい総理』(講談社+α文庫)、『宰相と怪妻・猛妻・女傑の戦後史』(だいわ文庫)、『21世紀リーダー候補の真贋』(読売新聞社)などがある。

  決定版 田中角栄名語録 | ムック / 書籍 | 株式会社セブン&アイ出版

 

このうち、店内で目が留まったのがこの個所。

歴代実力政治家を叩き合いにしたリーダーシップ論には定評がある。

 

本記事のテーマ

  「叩き合い」ではなく、「叩き台」では。

 似てるからタイプミスしてしまったんだろうと思った。

   Ta-Ta-Ki- a- i 

   Ta-Ta-Ki-Da-i

 

 大した事でもないのに、ある団体で会誌を編集した経験のせいか、帰り道ではずっと気になってしまった。

 しかし、日本在住の日本語ユーザーといっても、知らない表現に遭遇することはある。より正確さをを求めるなら自分以外の基準を参照することが必要だ。ということで国語辞書をひいた。ついでに、日本語コーパス少納言(=そこでは『現代日本語書き言葉均衡コーパス』(BCCWJ:Balanced Corpus of Contemporary Written Japanese)を利用できる)にも頼った。

 

それぞれの意味

  たたきだい【叩き台】

よりよい成案をめざして意見や批判によって練り上げてゆくための,もとになる案。試案。

大辞林 第三版] 叩き台(タタキダイ)とは - コトバンク

 

  たたき‐あい〔‐あひ〕【×叩き合い】

1 互いにたたくこと。また、互いに言い合うこと。「増税を巡るマスコミどうしの叩き合い」

2 商品の値下げ争いを展開すること。「赤字覚悟の叩き合いを演じる」

3 (競馬で)ゴール前で、騎手どうしが馬を鞭でたたいて競り合うこと。「ヤマザクラバナが叩き合いを制して優勝」

デジタル大辞泉] 叩き合い(タタキアイ)とは - コトバンク

 ちなみに、「対局時計の叩き合い」の場合はまた異なった意味を持つ。つまり、将棋の対局の終盤において対局者が互いに消費時間を減らそうとする早指し合戦の状況を意味するのだ。ぜひ、これを大辞泉の四つ目の意味に追加してほしい。

 

前後のつながり

 「叩き台」と「叩き合い」の基本的な意味は上の通り。そして、先ほどの著者profileの一文をもう一度確認する。

歴代実力政治家を叩き合いにしたリーダーシップ論には定評がある。

 これを文字通りに展開すると「書籍の中で、仮想的に有名政治家同士に(肉弾戦の)喧嘩をさせ、そこに教訓などを見出すという珍リーダーシップ論」となる。

 文脈をふまえると、「叩き台」に差し替えるほうがやはり自然だ。

 

結論

 だれかがタイプミスをして、それが訂正されずネットと書籍に残った。おやすみなさい。